この世のもの

見たものと考えたこと

映画『ザリガニの鳴くところ』

TOHOシネマズのチケットを購入したのに映画を見ないまま期限が迫っていた。今かかっているタイトルの中から一番見たかったものを。

公開してそれほど経っていないのだが上映は1日1回で、観客は少なかった。

 

原作小説は以前読んでいて、その時に脳内に映っていたものと、今日見たものがほとんど違わなかったような見事な映像化だった。結構長い話を2時間くらいにまとめているのに慌ただしい感じがなかったのはすごい。主人公は激情にかられやすい人で、実際に映像として見ると小説の落ち着いたトーンとは違って気圧されるものはある。あとは火見櫓が思った以上に高かったのはあった。あれは怖い。

映画を見たことで新たに得たものがあるのかというと微妙で、そもそも本当は殺したのか否かというところが肝の話なので、結末を知っている以上映画としては未見でも本質的には初見にはなり得ない。ミステリー要素のある映画全般そうだと思うので仕方ないが。

湿地の生物の描写は控えめで、また登場する鳥などはCGだと思うのだがちょっと不自然に思うようなところもあった。本物だったら申し訳ない。ともあれ、どちらかというと人間関係を描くことに重きが置かれていた。
ラストの描写は原作よりスマートだったように思う。年老いた2人の姿をあそこまで鮮明に描く必要はあったかは疑問が残るけれども。