この世のもの

見たものと考えたこと

Juice=Juice CONCERT TOUR 〜terzo bis〜 於オリックス劇場

Juice=Juiceのコンサート、アンコール公演。

つばきファクトリーについて書いてその脳になっていたところに炎天下古墳めぐりの疲労を上塗りしたような状態で行ったので、若干浮ついた心構えで臨んだのだが、圧巻のコンサートだった。やられた。思ってたのと違った。

井上さんが最後に楽しすぎて記憶が全然ないと言っていたが、こちらとしてもそんな感じで特に序盤は感涙していて、ちょっと普通ではない状態で観覧した。植村さんは客のせいでペース配分を間違えた(大意)ということを言っていたけれども、やはりオリックス劇場にフルに入っていた人数の多さと、大阪で公演をするという高揚感が相当なものだったのだと思う。しかも今は松永さん有澤さん、あと京都だけど江端さんと地元メンバーが多かったためにそれぞれに気合が入りまくっていて、それに周囲が影響されないわけもなく、結果的に全員がギラギラ感増量でパフォーマンスしていたのではないだろうか。

その気合いが形になって現れていたのが髪型で、段原美容室がフル回転だったらしい。こんな有能な人がいていいのだろうか。有澤さんは段原さんにハーフアップにしてもらっていて、とにかく嬉しそうだった。彼女はいつも独特な表現手法を採用しているので、本人の伝えたいものを受け取れているのか不安になる。入江さんは髪をウェーブにしていて、これは自分でやったのかな、ともあれ非常にかわいかった。植村さんも前半はロングの髪の毛にウェーブをかけていたので、姉妹のようだった。入江さんはリップも強めの赤で似合っていた。気がつけばJuice=Juiceは全員がほぼ黒髪になっていて、白い衣装に映えていた。

セットリスト前半はここ数年の曲で、かつどちらかというと格好良い方の路線の曲だった。松永さんなどは一切笑っていなかったんじゃないだろうか。今日の松永さんは髪が顔にかかりまくっていて、それが本当に似合うし、クールだった。そう、今日のJuice=Juiceはコンサート前半で「クールハロー」の正解というもの見せてくれていたと思う。佳林さんがラジオでよくこぼしているように、当時デビュー期だったJuice=Juiceが一番「クールハロー」の犠牲になっていたと思うのだが、今になって後輩たちがその借りを返してくれているように感じた。ノクチルカは前のセットリストにはなかったようだけれども、そこからFuture Smileの流れも非常に格好良かった。他のアルバム曲ももちろん演っていて、POPPIN’ LOVEは入江さんが大阪弁にアレンジしたセリフを披露していて(「すっごく好きだからなんやで」本当は「やから」というところを間違えたらしい)、通常版に増して攻撃力があった。拍手とどよめきが起こっていたように思うが心象かもしれない。私はこの曲が好き過ぎて、イントロがかかるだけで精神的に不安定になってしまう。

連夜同じ場所で(それも同じような席から…)コンサートを見ることでつばきファクトリーとの違いも実感できて、ダンスにしても歌にしてもそれぞれが個別に魅力を発揮している感じなのがJuice=Juiceだ。パズルのピースがはまって一つの景色を生み出しているのがつばきファクトリーとしたら、Juice=Juiceは絵の具をバシバシキャンバスに載せていった結果生まれる絵画を楽しむような感じ。喩えられているかな。割と全員で同じダンスをしているのだが、例えば段原さんと工藤さんと有澤さんとが同じ振り付けに見えないくらい解釈が違う。揃っていないと見る向きもあるかもしれないが(と言ってもオリジナルメンバーの頃よりはずっと揃っている)、みんなと同じダンスをする工藤さんが見たいかというとそんなことない。歌割も注意深く聴けばそれぞれの適性に応じて振られているのがわかるのだが、どこであれ自分の声を生かし、得意な歌い方で表現している。この傾向は今はいないメンバーたちが歌声に強烈な個性を持っている人々であったことから生まれたJuice=Juiceの良さだと思うのだが、その風土が今も引き継がれていることに感動する。

それぞれの方々

工藤さんがとにかくすごかった。今回のツアーの見どころと言えば稲場さんのパートを誰が埋めていくかということだけれども、果たして工藤さんがだいたいのところを引き継いでいた。稲場さんは金澤さんや宮本さん卒業後そのパートのかなりを受け継いでいたこともあるし、そうでなくとも簡単なことではない。Va-Va-Voomのフェイクとか、プラトニック・プラネットの最後とか、序盤でそれを目の当たりにして泣いていた。昨年から禁断少女の高木さんパートを担い始めたときは驚きそのギリギリの仕上がりを応援していたが、今回などは難なく歌いこなしているように見えたし、工藤さん流になっていた。且つ、GIRLS BE AMBITIOUS!の新歌詞(稲場さんの歌詞をうまく活かしていてこれも泣ける)にあるように「全力全開」な部分もそのままにJuice=Juiceの中核として輝いていて、この3年間の成長をまずは称賛したい。「ポップミュージック」のイントロが流れ出した瞬間からの目の輝き、私のターンとも言いたげな自信に満ちた表情は頼もしく、この曲が今セットリストに入ることが多いのは工藤さんのためでもあり、お陰でもあると思う。

段原・井上ペアがダブルエースのような感じで引っ張っている。井上さんは現在のセトリでもまだまだ加入前の曲が多いのに、全てを自分のパートとして確信を持って歌っているように見える。割とオリジナルの人に寄せないタイプの人なので、誰のパートだったか思い出せないことが多いが、佳林さんのとか多い気がしている。全然違う仕上がりになっているのが面白い。キャリアは全然違うが、Juice=Juiceで段原さんと同い年で活躍しているのも嬉しい。その井上さんもGIRLS BEで新歌詞があって、「Juiceとこぶしのハイブリッド」というこれも色々な人を泣かせそうなものだった。あと、STAGEのボイスパーカッションの切れ味が増していた。段原さんは昨年から高木さんの歌割という重責を負って大変そう(特にMagic of Love)だったが、完全にそこを制圧していた。そんなに高木さんと同じようにしなくても大丈夫なのに…と思っていたところを少しアレンジして声の良さが活きる形にしていたのもあるし、単純に能力がいまだに上がっていることもあると思う。ダンスは相変わらずキレキレだし、どこかの曲で1人蹴り上げていたのも良かった。表情もだいぶ本気のセクシー担当になってきている。そんなこんなできーともの穴をこの2人が見事に埋めているというか、別なものを打ち立てている。

松永さんは独自のポジションを確立していて、ダンスと歌も調和して1人の歌手として完成度が増しているように思った。圧倒的な存在感には佐藤優樹さんを想起せざるを得ないが、また違う格好よさがあるのであんまり言わない方が良さそう。以前は割と元々の歌割を担当している人に寄せている感じがあって(「Borderline」とか)リスペクトがあってそれはそれで良かったのだが、今回はむしろ自分の解釈を表現しているように思えた。「私がいう前に抱きしめなきゃね」(初期曲は今回これだけだった)の「私がいう前ならしていいのに」部分の歌い方と表情は、今までの誰とも違っていた。本人の解説が聞いてみたい。Girls be ambitiousだったと思うが最後に「おおきに!」と言っていて得した気分になった。最後の挨拶も感じが良くて、工藤さん同様伸び伸び育っているようにも思える。書き忘れていたが、Fiesta! Fiesta!の梁川さんダンスは松永さんに。結構独自路線だった。

植村さんはキャリアのほぼ全てにおいて歌が上手くなったと言われ続けている稀有な人だと思うのだが(皆さん見逸れ過ぎの嫌いも)、今回もまた上手くなったと思わされた。特に感動したのは「Goal」のAメロのところで、今や1番2番とも植村さんが歌っているのだが、同じメロディに対し歌詞に合わせて声の表情を全く変えていて、異常に明るい1番とやや不安感を含んだ2番という感じだった。そういうことする人ではなかったと思うので、妙に感動してしまった。またどの曲かは忘れたけれども前後のメンバーに合わせて繋ぎ合わせるような歌唱法(分かりにくい)をしていたのにも。ダンスにはベテラン・リーダーとしての風格が帯び始めていて、頼もしさがすごい。

あらゆる意味で「新人」でなくなった3flowerも素晴らしかった。今のポジションとしては、どの曲にも満遍なくという感じはなく、特性によって曲によっては活躍の場が多くある感じだ。有澤さんは特に目立つところ、要所要所で起用されている感じがあったが、入江さん江端さんも意外なところで突然歌ったりするので気が抜けない。禁断少女の梁川さんパートは金澤→稲場→有澤とだいぶ変遷を経てきたが、またそれぞれの先輩と違った歌い方だった。有澤さんと言えばアプカミの「雨の中の口笛」レコーディングが素晴らしかった、その声の良さが生かされていた感じがする。私は今日は入江さんと石山さんを応援する気持ちに佳林党としての要素も含めて紫を振ってみた。入江さんは喋る時の声の響きが異常にかわいく個人的に話し声として今世界一好きで、オクタグラムラジオの最新2回とかもかなり癒されるが、歌声にもその成分が少し出てきていて、ソロ歌唱動画の頃には知れなかった魅力がある。低めの音程も割とすんなり出ているように思えるし、まだちょっと把握しきれていないが、格好良いのもかわいいのもいけるし奇声も上げられるのでいずれかなりのアイドルになるはず。江端さんはソロアングルDVDを見たいくらいに表情の変化が大きいし、アイドル性が高いというかとにかく単純にかわいい。怒り顔や困り顔など引き出しが豊富で、船木さんとかデビューの頃の佳林さんとかを思い起こさせる。すごく研究していると思う。加入少し前くらいから加速度的に輝きを増していたけれども、今もその変化が続いている。歌も劇的に良くなっているように思う。力みが取れていて、独特のややハスキーな声が生きてきている。Juice=Juiceとしても強力な武器になる人だと思う。

新人紹介

衣装替えのタイミングなので、前半(Mon Amour組)と後半(雨の中の口笛組)に別れていた。年長者であるところの植村さんと工藤さんが仕切るが、それぞれ独特なMCぶりで客席と新人が当惑する。 

遠藤さんは

  • 先輩のようにキラキラ輝いたパフォーマンスをしたい。
  • スライムを作るのが好き。

石山さんは

  • 食べるのが好き。冷麺など。
  • ライブがしたい、お話ししたい。モデルの仕事もやってみたい。

遠藤さんは初めて生でみたが、心配になるくらい細かった。年齢的なものがあるのでこれから逞しくなっていくことでしょう。なかなか鋭い顔立ちをしていて、これからどんな感じになるのか、パフォーマンスを見るのが楽しみだ。特に前半は5人とも160cm以上なのでJuice=Juiceの平均身長の伸びを感じる並びだった。新人はヒールのない靴を履いているのでまだ高さはそれほど感じなかったが、遠藤さんとかどこまで伸びるのだろう。

最後のMC前などは鳴り止まないまさに万雷の拍手というのが起こっていて、これはマナーではなくてパフォーマンスに対するリアクションだった。声が出せない中、どのように賞賛するかと言ったら拍手しかない。純度の高い拍手だった。卒業公演でも初日でも千秋楽でもない公演でこの盛り上がりを生み出したのはすごいというほかない。植村さんは前述したように後半ばてたということで、それを嬉しそうに語っていた。キャリアが長くなってくるとそれほどの事態になることもないのだろう。今年初の夏バテがオリックス劇場ということで思い出に残る公演になったという植村節だったが、こちらとしても記憶に刻まれた。それにしてもMCの最初に場を和ませていた植村さんのMCが締めに変わったのは改めて感慨深いし、リーダーらしさよりも自分らしさを大事にしているのが今のJuice=Juiceを象徴しているようで心強い。

ハロステあたりでやってくれないだろうか。片鱗だけでも映像に残ってほしい。

書き漏れ

Magic of Loveが楽しかった。入江さんが「大好きだから」の一翼を担っている。井上さんが歌割を飛ばして、工藤さんがイヤリングを飛ばす。それを見つけて拾うところを曲の振り付けの一部のようにしていた。さらにもう一度落ちたのか、江端さんがそれを拾って舞台袖に投げるのもやはりかなりコミカルな動きをしていて、この曲ならではの演劇的な要素の一部になっていたのが良かった。元々は高木さんと佳林さんが主に活躍する曲だったけれども、今はメインプレイヤーが増えた。歌っていない時のメンバーの戯れ合いも含め、現状のJuice=Juiceの雰囲気の良さが出ている一曲だった。

 

1.Va-Va-Voom 

2.プラトニック・プラネット 

3.STAGE~アガってみな~ 

4.「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの? 

MC

5.ノクチルカ 

6.Future Smile 

7.G.O.A.T. 

8.POPPIN' LOVE 

9.禁断少女 

MC

10.雨の中の口笛

11.Mon Amour

12.Fiesta! Fiesta! 

13.私が言う前に抱きしめなきゃね 

14.GIRLS BE AMBITIOUS! 2022 

15.ポップミュージック 

16.Goal~明日はあっちだよ~ 

17.Magic of Love(J=J 2015 Ver.) 

MC

18.Familia